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2020.9.15
上智大学 総合グローバル学部 国際協力論 「ビジネスと人権」(アイエスジェイエンタープライズ)
この度、2020年9月15日に上智大学グローバル学部・田中雅子教授(開発学)からのご依頼で、上智大学総合グローバル学部国際協力論
「ビジネスと人権」「移民・難民と受入れ側である日本社会の関わり」と題し、講師を致しました。
未来のある学生の皆様に現代のリアルを知っていただければと快諾いたしました。
学生さんの、問題意識の高さなどとても驚きました。
議題・「岐阜の縫製業における技能実習生制度と受け入れ企業:協同組合の役割」
①岐阜の縫製業の概要ならびに自身の関わり
②MSI協同組合設立の背景となった技能実習生をめぐる課題
③課題解決のために必要な協同組合や企業の役割
④課題解決のために消費者や一般市民に期待すること
<上智大学総合グローバル学部からの質問>
★技能実習生や外国人労働者が「労働力」や「弱者」としてではなく、対等な仲間として認識されるためには、
私たち市民がどのように受け入れることが必要になると思われますか。学生に出来る具体的な行動をアドバイスしていただきたいです。
① 工場の利益と労働者の権利を考えた時に、調整が難しいと感じる場面があると察します。
そのようなときは、どのように対応しておられるのか、具体例をあげて教えてください。
② グローバル化や日本の縫製業が抱える問題など背景説明を必ずしも十分行わず、
技能実習生に対する人権侵害のみを取り上げるメディアもあると思いますが、
メディアの報道は、法令遵守をしている企業に対してどのような影響を与えているか、メ
ディアの報道の例などもあげながらご教示ください。
③ 技能実習生は、縫製業を選択して来日しているのでしょうか。
あるいは、来日が先にあり、縫製業での実習は、彼ら自身の選択ではないのでしょうか。
ベトナムなど技能実習生の出身国は縫製業が盛んな国が多いと思います。
幼い頃からの縫製業に対して憧れなどがあって、日本で縫製業のスキルを上げることを目指す人などもいるかと思います。
現地における縫製業のあり方が、技能実習生の動機に影響しているのかを教えていただきたいです。
・岐阜の縫製業の概要ならびに自身の関わり
岐阜県は、戦後繊維産業で復興を果たした繊維の街です。
私は、岐阜県内の縫製工場の2代目代表です。先代は1969年に個人事業主として縫製業を創業しました。
私が生まれたのは1973年です。家業の縫製業に協力し始めたのは20代前半頃でした。
1970年~1990年頃までは、繊維製品は国内生産が主流で経済成長と共に安定した職業でした。
1990年以降は、バブル崩壊に伴うアパレル会社の倒産や廃業が相次ぎました。
その後は、海外で大量生産された低価格の繊維製品に押され、国内の縫製産業は大きく衰退しました。
1991年の輸入品浸透率は51.8%(数量ベース)でしたが、2017年には、衣料品の輸入品浸透率は97.6%(数量ベース)に成りました。
国内製品は、わずか2.4%(数量ベース)まで激減しています。店頭で売られている商品100着に約2着だけが日本製と言うことになります。
1991年と比較して、2016年には衣料品の平均上代(定価)は約60%程度に下落しています。
バブル崩壊後の失われた20年でデフレーションが進み、衣料品は安くなり、国内製造の日本製は激減していきました。
外国人研修生制度は1981年(昭和56年)に創設され、1990年(平成2年)8月より団体監理型の研修が始まりました。
研修生制度は技能実習制度の前身になる法律です。その後、改正に改正がなされ現在の法律に変貌しています。
バブル崩壊と、海外製の安価な労働力の大量生産により、日本国内の縫製加工賃は下げ止まるところを知りませんでした。
研修生制度の頃(1990年代)は、研修生は実態として無給で研修費(月額)30000円程度の手当のみで、
研修という名の労働をさせている縫製工場が大多数でした。
外国人研修生は、賃金を得るために会社に残業をさせてほしいと懇願したと聞いています。
そこで会社や監理団体は、研修費とは別に、残業時給200~350円程度で、月間200~300時間の残業を行う事が当たり前に成ったそうです。
平成2年10月2日~の、岐阜県の最低賃金は521円でした。
現在、令和元年10月1日~は、851円です。当時は、雇用契約を伴わない労働だったと聞いています。
平成2年のブラック縫製工場の賃金例は、
基本給30000円(173.75時間)+(残業300時間×200円)=9万円(月間労働時間473.75時間)時給約190円です。
法律の不備、経営者の資質、安価な海外製品との加工賃値下げ競争など、多岐の理由で実質的には時給100円台が横行していました。
嘘と思われるかも知れませんが、全国各地で横行していました。
縫製業の一員として、他の縫製工場の不法行為を見てきました。
外国人を奴隷のように扱い、労働搾取をしていたのです。
そんな不法行為に加担するのが嫌で技能実習生受入れを行っていませんでした。
上記の理由で、当社は1969年から2014年までの期間、外国人研修生及び外国人技能実習生の受入れには消極的で、日本人で作る日本製に固執していました。
日本国内では、いくら求人募集をしたところで少子高齢化の影響も有り、服を作る縫製業を目指す日本国内の若者も激減していました。
国内の産業が、製造業からサービス業やIT主体に変わっていました。
また、従業員の高齢化、技術の継承、会社の生産力維持など今後の不安要素も多くなってきました。
そこで、ようやく当社が技能実習生を受け入れたのは2014年の年末でした。
ようやく技能実習制度を使い、技能実習生の受入れを開始していきました。
当時、岐阜県内にあった縫製会社A社が、過去6ヶ月間の賃金不払い、時給350円での違法賃金、
長年のセクハラ(技能実習生をスナックで働かせていた)など多岐の不法行為を行い、技能実習困難者が発生しました。
その技能実習困難者を引き受けたことが、最初の技能実習生でした。
劣悪な環境で働かされていたA社技能実習生を引き受ける際に、本人たちと話し合いを行いました。
しかし、最初は日本人全てに対して全く信用して貰えない状況でした。
僕が丁寧に話をしても、全く信用されませんでした。
僕をにらんで、話もまともに聞かない状況で、彼女たちに何が起こっていたのか?と興味を持ちました。
彼女たちの知っている日本人は、A社の社長だけだったため、A社社長=日本人。日本人=悪人と成っていたのです。
入管に移籍の申請中であったため、当社へ移籍する前に通訳を交えて食事会を開催しました。
移籍予定の技能実習生からは、
「前の倒産したA社では、食事会なんて一度も無かった」
「私たちは、あなたの会社でまだ働いて無いのに、こんな豪華な食事を食べさせてくれるなんて、社長はおかしいですよ」
など言われました。
当社に移籍し、初めての給料日に給料が貰えた事で、彼女たちに安心して貰えました。
その後、厚労省の未払賃金立替払制度の申請に協力を行い、彼女たちは満額では有りませんでしたが、支払われて無かった給与の一部を得られました。
笑顔の無かった元A社技能実習生に笑顔が増えてきました。
それが、当社の初めての技能実習生でした。
帰国するまでに、日本を好きに成ってほしい。小さな活動ですが、大切な事ではないでしょうか?
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MSI協同組合設立の背景となった技能実習生をめぐる課題
当社が技能実習生を初めて受け入れたのは2014年の年末でしたが、技能実習制度の事をあまり知らない状況で、団体監理型で受入れを始めました。
MSI協同組合での受入れを始めるまでに、3社の監理団体で技能実習を経験しました。
そこで目にしてきたことは(2015年以降)、
・いまだに時給350円の組合員(企業)が存在していた。
・いまだに基本給5万円(技能実習生)の組合員(企業)が存在していた。(控除協定書は完全無視)
・協同組合の職員から、ガソリン代、駐車場代、ラーメン屋のレシート、電車代、国会議員に頼むとの訳の分からぬ経費などが、組合費以外に請求が横行した。(後に、職員の寸借詐欺と判明)
・技能実習法で定めがある、定期訪問や定期監査を行ってくれない監理団体だった。
・労基署調査に監理団体が虚偽報告をしていた。
・入管調査にも同様に監理団体が虚偽報告をしていた。
・ほとんどの縫製会社は、給与明細書を発行していないことが判明した。
・ほとんどの会社でタイムカードが使われていない事が判明した。
・一部監理団体では、そもそも常勤職員が居なかった。
・豚小屋のような寄宿舎で、家賃が3万円も控除されていた。
・訴えをおこした技能実習生を、暴力的に強制帰国させていた。
・妊娠を理由に解雇していた。
・恋愛を理由に解雇していた。
・外国人ブローカーが、暗躍していた。
・外国人ブローカーが、保証金契約をしていた。
・母国での日本語講習が書面上のみで、「あいうえお」さえも理解できない技能実習生が入国した。
・外国で行う、入国前健康診断で改ざんが横行していた。入国後の健康診断で病気が多数見つかった。
等
その他、多くの問題が山積していました。
零細企業、小規模事業者の縫製工場には、労務管理と言った言葉も知らない社長が多く居ました。
技能実習生が労働組合などに救済支援保護を求め、数多くの労働争議が有る事も見てきました。
戦後、岐阜の経済を牽引した繊維産業の衰退を目の当たりにしました。
また、新たに外国人技能実習機構が新設され、外国人技能実習保護の機運も高まってきました。
そんなとき、もし自分達で監理団体を運営することが出来たら何が出来るだろうかと考える様に成りました。
最低限の事として、いくつかのルールを守れる組合員のみで技能実習は出来ないものか?と、考えました。
(最低限のルール)
・法定賃金を払うこと。
・過去に不払い賃金が有るのであれば、自ら過ちを認め技能実習生全員に差額賃金を払い、過去の不払い賃金を精算(和解合意)すること。
・タイムカードや出勤簿は、技能実習生が本人打刻を行なう事。
・いかなる理由があっても100時間を越える残業はやらない事。
・労働条件通知書を技能実習生に必ず渡す事。
・給与明細書を必ず渡す事。
・賃金を指定日に必ず払う事
・技能実習の指定された作業以外(技能実習計画齟齬)は行わない事。
・強制貯金を行わない事
・パスポート、通帳、在留カード、銀行印、銀行カードは、技能実習生本人が管理する事。
・人権侵害行為、パワハラ、セクハラ、モラハラを行わない事
等
普通の会社では当たり前の事ですが、2015年以前の全国の縫製工場では、これらを遵守していたのは、体感的に5%弱だったと感じています。
アパレル産業が衰退していく中で、国内に縫製工場を適切に残したいと思いました。
仲間たちを募り、適切な技能実習を行う組合員のみで監理団体事業を開始しました。
・課題解決のために必要な協同組合や企業の役割
課題解決に向けた役割ですが、すべての監理団体及び実習実施者が正しく技能実習制度を使えば何も問題は有りません。
適切な法律を作り、その法律を適切に運用するだけで、ある一定程度の問題は簡単に解決します。
その為には、労働者と使用者(企業)が協力する労使協調、企業、監理団体、外国人技能実習機構、入管、経産省、都道府県庁等が、官民一体で取り組む事が求められます。
しかしながら、日本国内には報道されない劣悪な不当労働会社があまりにも多くあります。
そもそも、労働法について一から学んだ経営者はどの程度の比率で居るのでしょうか?
労働法を全く知らない人でも、会社を作れば簡単に社長になれるのが実態です。
技能実習法も、労働法も、全く知らないで経営している会社が多すぎるのです。
本来、事業協同組合は組合員(企業)同士の相互扶助によって運営されています。
協同組合が、新たな法律などを正しく企業に教えていく事が必要です。
協同組合は監理団体として、技能実習生の保護と、企業の育成に力を注ぐ事が求められます。
企業は、技能実習法を正しく使い、現代の徴用工問題と揶揄されないようにしなければ成りません。
現在、小さな活動を積み重ね、岐阜県内での縫製工場の適正化は大きく進んでいます。
全国的に見ても、ホワイト工場が多い都道府県になっていると感じています。
岐阜県内のホワイト工場比率は約30%強と感じています。(2020年現在)
残念ながら、全国的に見れば縫製工場の90%以上で、いまだ不当労働行為があると感じています。(2020年現在)
・課題解決のために消費者や一般市民に期待すること
消費者に期待したい事は、その製品が労働搾取の無いクリーンな商品で有るか?と、興味を持って頂きたいです。
安ければ良いと考える消費者が多いです。日本製の婦人服や紳士服が、3900円で買えるとしたら、何らかの絡繰りが有ると思ってください。
生地や付属代。デザイン料、パターン(型紙)制作費、百貨店利益、アパレル会社利益、縫製加工賃などが積み重なった金額が販売価格(上代)です。
用尺1m(生地値1000円)のスカートが有るとします。
縫製に、90分を要したとします。851円(岐阜最低賃金)×1.5時間=1277円
工場の固定経費も必要です。概算で人件費と同額で工場経費設定すると1277円
付属(ファスナーや裏地)400円
上記を合算し3954円
その他に、企画料、デザイン料、パターン代、利益を合計1500円(1着あたり)で設定してみましょう。
ここまでで、5454円
その他に、販売店舗の利益や送料が必要です。
アパレル商品の原価率は20~55%と幅は広いですが、平均的な33%で計算をしてみますと、適正価格は16362円程度に成ります。
3900円や5900円で売っている日本製婦人服紳士服を信用できますか?
残念ながら、不当労働行為の温床になっている商品が多く有ると思います。
また、実際は安価な海外で作った商品を日本製と書き換えて販売されている、産地偽装も多く有るのが実態です。
大手ECサイトで販売しても、大手百貨店で販売しても、家賃や販売手数料は上代の20~40%前後が多く見受けられます。
例えば5000円の商品で40%の手数料を搾取された場合、残るのは3000円。それで、国内法に基づいた適正な労働対価は支払えるのでしょうか?
安ければ良いと言う消費者目線も分かりますが、それでは結果として国内産業の空洞化にも繋がっています。
日本国内製品が必要なくなれば、その産業は国内から無くなります。
現在、縫製工場は疲弊しながらも国内に残っています。そんな中、コロナ禍において、アイソレーションガウンの争奪戦が世界で繰り広げられています。
一般的には医療用ガウンと言われ、医療従事者保護の観点から世界的に戦略物資になっています。
国内に縫製工場が有り、外国人技能実習生も多数居た事から、新型コロナ感染症が広がった本年春以降、全国的にアイソレーションガウンが製造され、医療従事者保護に繋がっています。
ガウン製造マスク製造での社会貢献活動を通じ、技能実習生の地位向上にも繋がったと思います。
賢い消費者が、国内製品に愛着を持ち、その価値を理解し認めて頂く事で縫製産業が残ります。
消費者の適切な消費行動を持って、縫製産業の空洞化を阻止する事も必要と考えます。
<上智大学総合グローバル学部からの質問>
★技能実習生や外国人労働者が「労働力」や「弱者」としてではなく、対等な仲間として認識されるためには、私たち市民がどのように受け入れることが必要になると思われますか。
学生に出来る具体的な行動をアドバイスしていただきたいです。
① 工場の利益と労働者の権利を考えた時に、調整が難しいと感じる場面があると察します。そのようなときは、どのように対応しておられるのか、具体例をあげて教えてください。
② グローバル化や日本の縫製業が抱える問題など背景説明を必ずしも十分行わず、技能実習生に対する人権侵害のみを取り上げるメディアもあると思いますが、
メディアの報道は、法令遵守をしている企業に対してどのような影響を与えているか、メディアの報道の例などもあげながらご教示ください。
③ 技能実習生は、縫製業を選択して来日しているのでしょうか。あるいは、来日が先にあり、縫製業での実習は、彼ら自身の選択ではないのでしょうか。
ベトナムなど技能実習生の出身国は縫製業が盛んな国が多いと思います。幼い頃からの縫製業に対して憧れなどがあって、日本で縫製業のスキルを上げることを目指す人などもいるかと思います。
現地における縫製業のあり方が、技能実習生の動機に影響しているのかを教えていただきたいです。
★技能実習生や外国人労働者が「労働力」や「弱者」としてではなく、対等な仲間として認識されるためには、私たち市民がどのように受け入れることが必要になると思われますか。学生に出来る具体的な行動をアドバイスしていただきたいです。
回答
学生に出来る具体的な行動と言う事なので、47歳の私からの意見が適切かは分かりませんが、ひと言で言えば「異文化交流の促進」だと思います。
僕は、2018年は20回、2019年は15回~20回程度海外に行きました。現地におもむき、外国人の考え方、職場環境、学習環境、宗教観、ファッション、食文化、流行などに直接触れました。
例えば中国。遼寧省大連と四川省成都では、考え方、働き方、食文化などとても違います。僕から見る中国は、安価な労働力とは思えません。
皆さんが思うより、大富豪がたくさん居ます。新車のベントレーや、最新のテスラ自動車、フェラーリなどもそれほど珍しい物では有りません。
しかし、未だに月収15000円程度の人口もたくさん居ます。中国は、格差社会なのです。
中国人と言うだけで安価な労働力、弱者なんて事はありません。
対等な仲間どころか、僕らでは相手にして貰えない上流階級も多数存在します。
私の知人にも、高級ブランドが入るビルの2フロアを現金18億円(1億2000万中国元)で購入した者も居ます。
北京の中心部で1部屋1億円以下のマンションなんて見つかりません。知日家も多く居ますし、親日家もたくさん居ます。
残念ながら反日家も多数居ます。日本国は、島国で国境を海に囲まれているため、歴史的に陸路による異文化交流がなかった。
相手の事を知らないから、先入観で外国人を見てしまうのでは無いでしょうか?
中国の孫子の兵法には、「彼を知り己を知れば百戦して殆うからず」という名言が有ります。
まずは、相手を知る事、外国人を知る事、先入観を捨て本当の彼らとふれあう事で、相手を知り対等な仲間として認識されるように成るのではと思います。
コロナ禍の状況で海外には行けませんが、国内に居る外国人と触れ合って、新聞や雑誌では手に入らない本物の情報を掴んでください。
・工場の利益と労働者の権利を考えた時に、調整が難しいと感じる場面があると察します。そのようなときは、どのように対応しておられるのか、具体例をあげて教えてください。
回答
労働者の権利を、今回は労働対価(給与)として答えます。
労働者の権利(給与)を、雇用条件書通りに支払う事は当たり前の事ですが、経営者には、引き算経営者と足し算経営者が居ると思います。
引き算経営者は、売上が100万円有ったから、その範囲内で支払いを済ませる経営者。
足し算経営者は、経費が100万円掛かったから、それ以上の売上を得る営業をする経営者。
民間企業は、経費削減は昔からやっています。しかし、日本には最低賃金法が有ります。ほぼ毎年最低賃金は上がります。本来であれば、足し算経営しか出来ないのが基本です。
労働者の権利(給与)を守りながら、国内で商売をやるには国内法を守る必要があります。
引き算経営者の最低賃金すら払えない会社であれば、廃業するか、海外移転するしか有りません。
残業時給300円の労働搾取企業と法定残業時給1000円以上を支払っている会社が、同じ土俵で勝負が出来るはずが有りません。
これは不当競争です。人件費が3割以下の労働搾取企業がホワイト企業に対して不当競争を仕掛けているのです。
このままでは、不当競争によりホワイト企業は経営破綻に追い込まれ、労働搾取企業は労基署などに摘発されれば破綻します。
結果的には、ブラックもホワイトも破綻する可能性が有るのです。そのルールを守れない会社が、外国人技能実習生問題を引き起こしています。
小規模事業者であれ、労務管理と営業力が経営には重要です。
営業力があれば、足し算経営が実現できます。労働者の権利(給与)が守られれば、生産力が温存され、技術の継承も出来ます。
永遠の課題です。
・グローバル化や日本の縫製業が抱える問題など背景説明を必ずしも十分行わず、技能実習生に対する人権侵害のみを取り上げるメディアもあると思いますが、メディアの報道は、法令遵守をしている企業に対してどのような影響を与えているか、メディアの報道の例などもあげながらご教示ください。
回答
法令遵守している企業としてお答えします。縫製に限らず、外国人技能実習生の問題をメディアで取り上げて頂く事により、外国人問題が解決に向かう事はとても良い事です。
ホワイト縫製工場としての取り組みは、話題性に欠けますので反響は小さいですが取り組んでいます。
劣悪な労働環境が報じられる縫製業界だからこそ、ホワイトな工場運営もいずれは話題になって貰えればと考えています。
上記の6枚の写真は、当社が取材を受けた記事です。
今後メディアには劣悪な労働搾取企業と、ホワイト企業の取り組みを比べて報道してもらえれば幸いです。
しかしながら、ホワイト縫製工場自体がまだまだ少なく、「ホワイト縫製工場に、取材に応じて貰えない」とテレビ局ディレクターから聞いた事も有ります。
労働搾取縫製企業がメディアで報道されても、ホワイト縫製工場に現時点で大きな損害は無いと思います。
・技能実習生は、縫製業を選択して来日しているのでしょうか。あるいは、来日が先にあり、縫製業での実習は、彼ら自身の選択ではないのでしょうか。ベトナムなど技能実習生の出身国は縫製業が盛んな国が多いと思います。幼い頃からの縫製業に対して憧れなどがあって、日本で縫製業のスキルを上げることを目指す人などもいるかと思います。現地における縫製業のあり方が、技能実習生の動機に影響しているのかを教えていただきたいです。
回答
当団体(監理団体)の経験としてお答えします。
縫製業を進んで選択する人も居れば、そうで無い人も居ます。ひと言で言えば、その両方が存在します。
当団体の中国・ベトナムからの技能実習生の場合、現地にて縫製の試験と言いますか、習熟度確認のためミシンを使っての面接を行い、
縫製作業にたずさわった事が有る人のみを技能実習生として呼び寄せています。(前職要件)
しかし、ベトナムなどの送出し機関の多くは、技能実習候補者に好きな職種の面接に応募させます。
人気職種で採用されなかった者たちを、不人気職種の面接に参加させていきます。
本来は、水産加工の経験者が日本の進んだ水産加工技術を学びに来るのが技能実習です。
機械保全職種で応募する者たちも、本国で機械保全の職種に就いていて、日本国に行き、機械保全技能を習熟するために来ることに成っています。
その他の職業も同じです。母国で、縫製職種で働いていた人が、日本で縫製技術を習熟する。これは、技能実習法に基づいた国際貢献に成ります。
残念ながら、水産加工も機械保全も婦人服縫製も未経験の人たちが来日している実態が数多くあります。
技能実習生で来日するには、その職種で働いていた経験が必要です。上記の例などは、送出し機関による、履歴書の虚偽及び改ざんです。
中国からの縫製職種の技能実習生の場合、ほぼ経験者で構成されています。主要な目的は、ほとんどが出稼ぎです。
ベトナムからの縫製職種の技能実習生の場合、経験者は半数程度と感じています。ベトナムの基本給は2万円程度です。
ベトナムに進出した日系企業の需要が有り、日本語検定3級所持者は3万円。日本語検定2級所持者は4万円。日本語検定1級所持者は6万円。日本語を学べば、その後の収入に大きな影響があります。
その為、中国人よりベトナム人の方が日本語学習に前向きです。中国の縫製技能実習生は出稼ぎ目的が多数、ベトナム縫製技能実習生は出稼ぎと日本語の勉強が多数です。
ベトナムでの技能実習生縫製職種は人気がありません。日本での、長時間労働、最低賃金法違反などが理由です。
当団体が、募集する中国・ベトナム人縫製技能実習生は、それなりに人気があります。
人気の理由は、正しい「求人票」を発行し、基本給から残業手当まで明確に記載がなされているからです。
いわゆるブラック縫製工場の求人では、適正な求人票は存在しません。例えば、残業時給500円、月間150時間残業、手取り15万円とか曖昧な求人が行われています。
中国でもベトナムでも、縫製職種を希望する人材は減少傾向に有りますが、適正な求人票を発行し、送出し機関と真面目に取り組めば技能実習候補者は集まるのが現状です。
正しく行っている実習実施者に、前向きな良い人材が集まれば良いと思います。
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