コロナ下で需要が高まっているマスクもスタートした
縫製工場のアイエスジェイエンタープライズ(岐阜市、井川貴裕社長)は柔軟な生産ロットへの対応、
丁寧な物作りに定評がある老舗工場だ。アパレルを中心にマスクなどアイテムのバリエーションも増やし、取引先が拡大している。
外国人技能実習生との良好な関係性も意識しており、「帰国後も親日でいて欲しい」との思いを込める。(森田雄也)
小ロットから量産まで
アイテムはワンピースやブラウス、スカートなど軽衣料、ジャケットやコートなど重衣料の布帛全般を扱う。
婦人が主体だが、メンズのジャケットやチェスターコートなどでカジュアル寄りのアイテムについても対応できる。

取り組み先はセレクトショップのほか、ユーチューバーやインスタグラマーなどインフルエンサーによるファッションブランド、
高級ホテルのユニフォームの縫製までこなす。コロナ下で需要が高まっているマスクの生産もスタートした。
現在、岐阜のサッカークラブ、FC岐阜のオフィシャルマスクを生産している。
サンプル生産をはじめとする小ロットから、1000枚を超える量産まで幅広く対応できる柔軟さが売りだ。
井川社長は監理団体のMSI協同組合の代表理事も務め、アイテムやロットで必要があれば、組合に加入する約30の縫製企業に仕事を依頼するケースもある。
依頼先の縫製企業は未払い賃金や最低賃金法違反などがない「当たり前だが、全てホワイトな縫製工場」(井川社長)と強調する。
全国でいまだに実習生問題が残る中、重要なポイントになっている。
本縫いミシン40台、ハトメ穴かがり3台、ボタン付け2台、ルイス2台など特殊ミシンも含めて豊富に揃える。
不良品発生を防ぐために社内外で検品、検針もチェックする二重体制を採る。
ベトナム、中国から
ベトナム、中国からの技能実習生と日本人の縫製工員など全19人が働く。
文化ファッション大学院大学を卒業した中国人の女性も雇用しており、CAD(コンピューターによる設計)を操れ、日本語が堪能なため、通訳として実習生との橋渡しの役割も担う。
技能実習生にはイベントごとに撮った写真を製本してプレゼントする
「実習生として日本に来たからには、日本のことを好きになってもらいたい」。
この思いも強いため、地元岐阜の和紙の産地を見学したり、京都の清水寺へバスツアーで観光に行ったりと毎年イベントを開いている。
夏の風物詩のゆかたを着て日本のファッションに触れてもらうこともある。
イベントでは写真を撮って、それを製本して実習生にプレゼントもする。「日本でいっぱい働いて技術を学び、いっぱい遊んでいって欲しい」。
帰国しても「ずっと親日でいてくれれば」と井川さんは考える。
同社の前身は井川社長の父、井川勝美氏が1969年に創業した、
井川縫製。09年に現在の井川社長が2代目に就任し、アイエスジェイエンタープライズに社名変更した。